世の中で本来とは違った意味で使われてる言葉はたくさんあるけど、「絶対音感」ほど意味が一人歩きしてる言葉はないのではないかなぁ。「絶対」ってその言葉の響きが何か万能感の漂う雰囲気を醸し出してるから誤解されてるのかもしれないけど、実はそんな特別なものではないです。

絶対音感とは、音の基準が固定されているという意味です。例えばドはド、ド♯はド♯、レはレとして考える。これが絶対音感であり、それ以上でもそれ以下でもない。

それって普通じゃない?と思うかもしれないけど、それとは別に相対音感というのがあります。相対音感では基準値が変動する。例えばドレミファソラシド、と弾くのとソラシドレミファ♯ソ、と弾くのは同じ価値であると考える。基準値がドからソに移ってるだけで、動きとしては同じだから。

だったら、ドレミで考えずに1,2,3,4,5,6,7,8と数字で考えてみるのはどうだろう、というのが相対音感の考え方。ドレミもソシレも同じ1,3,5なんだ、というように数字で捉えるんですね。これを深めていくのが和声(コード)の勉強です。

簡単に言うと、相対音感では数学的に「音の価値」を考える。絶対音感ではそういうことはしない。だから、音楽制作の現場では相対音感の考え方が出来ないと結構苦労すると思います。音の価値を知らないと話が通じませんから。犬小屋なら日曜大工でも出来るけど、設計図が無いとビルは建たない。それと同じことが音楽でも起こるわけです。

絶対音感って暗算力みたいなものだと思うんです。暗算が早いと便利だけど、だからといって数学が得意になるわけじゃない。数学で必要なのは思考力であって計算力ではないからです。絶対音感の持ち主が必ずしも作曲が上手いわけではない、というのはこれに似てると思います。

ちなみに絶対音感は幼少期でないと身に付かないというのもウソで、大人になってからでも身に付きます。相対音感は理論的なことが多いので、むしろ大人の方が身に付けやすいかもしれません。というわけで何事も遅すぎることはないということで。

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